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Health care – スウェーデン日本人医療従事者の会

12月10日はノーベルの日

先週、12月10日にノーベル賞授賞式と晩餐会が開催されました。この日はアルフレッド・ノーベルの命日で、毎年この日に授賞式と晩餐会が開かれます。そしてスウェーデンではこの様子がTVで生中継されます。

今年は京都大学の本庶特別教授がノーベル生理・医学賞を受賞し、沢山の日本のメディアがストックホルムに来ていました。

日本人の受賞、そしてその研究が元になった免疫療法を投与しているという事で、日本の新聞社からインタビューを受けました。

この会の他の会員も日本からの電話でのインタビューを受けたりもしていました。

 

 


2018年ノーベル医学・生理学賞に寄せて

本庶佑教授が、免疫を抑える働きを阻害することでがんを治療する画期的な免疫療法を確立し、がん治療に新たな道を開いたという功績が認められて、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

私の職場では、連日このような免疫療法を投与しているので、私にとってはとても身近な話題でした。

このような免疫療法を受けている数人の患者さんから、「この治療の恩恵を受けている私にとっても、このノーベル賞はすごく嬉しい!昨日はあまりにも嬉しくって自宅でお祝いしちゃった」というコメントを頂きました。

私の職場は腫瘍内科の通院治療病棟で、連日沢山の患者さんが抗がん剤や免疫療法の治療のために訪問されます。記憶は定かではありませんが、私の職場では2013年頃より Yervoy(一般名:イピリムマブ) の投与が始まりました。当時、この薬品は25万クローナ(約300万)と設定されていて、投与の決定には病院長を含めた数人の病院幹部での会合で承認されないと投与が出来ないことになっていました。
スウェーデンでは点滴などの抗がん剤は患者さんの負担ではなく、全て公費で負担されます。患者さんの経済状況ではなく、疾患にどれだけ治療が必要か?というのが治療を決定する大きな要因です。しかし、病院としては予算もあるので、出来るだけ効果のある患者さんに薬品が使われるように配慮が必要と言う背景があります。ですから、主治医の判断だけではなく、全体の予算と治療がどれだけ有効なのか?という 「医療経済」が重要になります。

このような背景から、当時腫瘍内科の国内の学会では 「医療経済」が度々取り上げられていました。

その後、オプジーボ (一般名:ニボルマブ) 、キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)と、次々と承認され、悪性黒色腫、腎臓がん、肺がんの患者さんに使用されています。また現在は手術前のトリプルネガティブ乳癌の患者さんに対してキイトルーダ、転移のある肺がんの患者さんを対象としたAtezolizumabという薬剤の治験も行われています。

スウェーデンの場合、抗がん剤の投与は一部の病院に限られているため、その病院はかなりの数の抗がん剤を購入します。その為、薬品を扱う会社と値段の交渉も可能です。その為か、5年前に比べると免疫チェックポイント阻害剤の購入価格も少し下がったようです。そのようなことで、ここ数年は病院幹部のカンファレンスではなく、それぞれの医局毎のカンファレンスで治療方法が話し合われます。しかし、その部門での医局長のようなボスの立場の医師は予算に関しても責任があるので、医療経済も考慮しながらの決定となります。

免疫チェックポイント阻害剤は通常の抗がん剤と違い、幅広いがんに効果的と言われています。しかしながら高額な薬であるために、どの患者さんに使用すれば医療的にも経済的にも有効に使えるのか?という事を考えることが必要であると考えられています。

# Lisa Indra


日本の助産師免許を持ち、スウェーデンで助産師を目指す方へ

以前はEUとスイス以外の助産師免許を持っている人は、まずスウェーデンの看護師免許をとり、それから助産師免許を取るという流れでしたが、2017年の1月からスウェーデンの看護師の免許がなくても、直接助産師免許の申請ができるようになったようです。この背景には、看護師の免許なしで助産師の免許が取れる国があること、スウェーデンでの助産師の人材不足があるようです。

Socialstyrelsen (資格免許を管轄している所)のHPで新しいシステムでの助産師免許取得までの過程をわかりやすく説明しています。

https://legitimation.socialstyrelsen.se/en/educated-outside-eu-and-eea/midwife-new-system-for-applying-for-a-license-to-practice-for-midwives

そこからちょっと抜粋して説明を加えておきます。

1Application for assessment of your education

日本での教育、免許を査定してもらうための申請をする。申請にかなり時間がかかるので並行してスウェーデン語の勉強(svenska3まで終了している必要あり)をするようになると思います。

https://www.socialstyrelsen.se/blanketter/Documents/blankett-granskning-utbildning-utanfor-eu-ees.pdf

2Taking the proficiency test for nurses

Once your education has been assessed, the next step is taking a proficiency test for nurses. The proficiency test consists of a theoretical part and a practical part, and it is in Swedish. The knowledge required as a nurse is included in the Swedish requirements for midwives and this is why this test is the first step.

看護師としての知識を見る筆記試験を受ける。これにパスしたあとは、助産師免許を取るためのステップに直接移行できます。(もちろん看護師免許も欲しければ、看護師筆記試験のあと実習などをして看護師免許をとってから助産師免許のステップに行くことも可能です)

3Taking the proficiency test for midwives

助産師の筆記試験を受ける。

試験にパスした後はスウェーデンの法律などに関する講義をとり、実習をすると助産師免許の申請ができるようになります。

 

★ちなみに海外の助産師免許持っている人のための学校で学ぶ1年間のプログラムもあります。これを受けると上記の筆記試験が免除になり実習も学校でアレンジしてくれるので、自分で探すよりはずっと楽だと思います。欠点はたぶん大きな都市ストックホルムなどでしかやってない事でしょうか。Karolinska Instituteのプログラムの担当者にメールで問い合わせをしてみたら、スウェーデンの看護師免許を取っていなくても、日本での教育の査定とスウェーデン語(Svenska 3)がクリアできてれば申し込みができるようです。

https://ki.se/utbildning/7kb18-kompletterande-utbildning-for-barnmorskor-med-utlandsk-examen-fran-land-utanfor

 

最後に、システムや規則はその時々で変わることも大いにあるので、実際にプロセスを踏むときにはご自分で最新の情報を確認してください。

 

# KEX

 

 


PSA検診に関するスウェーデンSocialstyrelsenの見解

スウェーデンでは毎年10000人の患者さんが前立腺がんの診断を受け、その内2400人の患者さんが前立腺がんが原因で亡くなっています。そして、その亡くなった2400人の内、1800人は診断が遅かった事が死亡の一つの要因とのことです。

しかし先日SocialstyrelsenはPSAのスクリーニングはしないという事を発表しました。

「14年間のデータ収集の期間、死亡に至らない前立腺がんの患者さんで必要以上に治療を受けた症例が、PSAによる早期発見で死亡を避けられただろうと考えられる症例の10倍以上だった」というスウェーデンの研究がこの判断のもとになっているという事です。

この発表に対し、前立腺がん患者会は「非常に遺憾である」というコメントを残しています。

https://www.svt.se/nyheter/inrikes/ny-rekommendation-om-screening-av-prostatacancer

http://sverigesradio.se/sida/artikel.aspx?programid=103&artikel=6884759

 

# Lisa Indra


謹賀新年

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、ご存知の通り、カロリンスカ大学病院の新病院の建設がほぼ終了し、随時引越しを行っております。2018年の秋までには引越しが完了する予定になっており、それに伴い、救急患者の受け入れに大きな変化があります。大学病院の救急外来では、従来、ドロップインの受け入れをしておりましたが、移転に伴い、救急車やヘリコプターによる搬送患者か紹介状を持った患者の受け入れに限ることとなり、ドロップインでの受診はできなくなります。

これまでドロップインで受診していた多くの患者さんの受け入れですが、新しく救急診療の窓口ができます。

こちらを参照してください。

カロリンスカ大学ソルナの元子供病院だったところには、Närakut Hagaができました。診察時間は8時から22時まで。


Mustaschkampen (口ひげキャンペーン)

口ひげキャンペーンはスウェーデンの前立腺がん協会が「前立腺がん」という疾患をより多くの人に知ってもらい、研究のために多くの資金を集めることを目的としたキャンペーン運動です。

 

日本では2017年は大腸がんが一番一般的ながんになるであろうと予想されていますが、皆さんはスウェーデンでどのがんが一番一般的かご存知でしょうか?

http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html

 

スウェーデンで一番一般的なのは前立腺がんなんです。

https://www.cancerfonden.se/om-cancer/aktuell-statistik-om-cancer

 

スウェーデンでは毎日27人の男性が前立腺がんの診断を受け、10万人の男性が前立腺がんという疾患とともに生活しているそうです。

 

毎年10月に行われるピンクリボン運動は世界的なキャンペーンで、乳がんに多くの注目が集まりますが、スウェーデンで一番一般的な前立腺がんが語られることはあまりありませんでした。Wkipediaによれば、スウェーデン国民の70%が「乳がんが一番一般的な癌である」と思っているようです。
そして、女性に比べて、男性は体や病気のことに関して話題をするのが少ないのでは?とも言われています。そんな背景の元、もっと「前立腺がん」の知識を広め、関心を持ってほしいという思いから「口ひげキャンペーン」の運動が2007年より始められました。

 

私の周りでも、11月になると職場のお得さんや、義理の息子がこのキャンペーンのために口ひげを生やしたりしています。(彼の彼女からは大不評のようですが)

 

皆さんもこの機会に「前立腺がん」に関する知識を深めてみてはいかがでしょうか?

ピンクリボン運動同様、寄付の受付もしているようです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=9X8_DsJ4RDk

 

http://mustaschkampen.eu/

# Lisa Indra


Rosa Bandet-kampanjen ピンクリボン運動 

日本同様、スウェーデンでも毎年10月はピンクリボン活動(Rosa Bandet-kampanjen)の月です。商品を買うとその金額の一部が「がん治療の研究」のための寄付されたり、TVでも寄付を募る番組が放映されます。今年は10月28日で7チャンネルです。

また、ジュエリーデザイナーであり、自分自身乳がんを経験しているEfva Attlingが2017年のピンクリボンのデザインを請け負いました。こちらはICA,LINDEX, Apotek Hjärtatで販売しており、一つ購入することで30krの寄付になります。

 

このようにして研究のための寄付を集めることも大事ですが、乳がんという疾患や予防についての知識を広めることもピンクリボン運動の大きな目的の一つです。

皆さんは乳がんの月に一度の自己チェックをされていらっしゃるでしょうか?私はがんの治療現場で働いているにも関わらず、気が向いた時にしかしていないという有様です。が、ピンクリボン運動の10月に心を改めて、毎月第一日曜日にシャワーを浴びる時に自己チェックを始めることにしました!
自己チェックについてはこちらのをご覧ください。

https://www.pinkribbon-oita.com/乳がんセルフチェック/

 

http://res.cloudinary.com/cancerfonden/image/upload/v1504096394/heroimgs/zjb0km0inmwwmfott4ni.jpg

 

 

もし、しこりを見つけたら

 

スウェーデンでは専門医を受診するためにはまずはVårdcentralenを受診するのが一般的ですが、乳房にしこりを見つけた場合は紹介状なしで直接病院に連絡を取ることが出来ます。

 

ストックホルムの場合

・Karolinska Bröstcentrum 08-517 70075

・Södersjukhuset Bröstcentrum 08-616 2300

・St Göran sjukhuset Bröstcentrum 08-5870 1360

 

ストックホルム県以外でも紹介状なしで病院受診が出来るのではないか?と思いますので、詳しくは1177vårdguidenで調べてみてください。

 

乳がんの患者会やがん基金のサイトにも沢山情報が載っていますので、こちらも是非ご覧になってください。
乳がん患者会

http://www.bro.org.se/ (スウェーデン語のみ)

 

Cancerfonden(がん基金 https://www.cancerfonden.se/)への情報・相談の窓口は

mailto:infostodlinjen@cancerfonden.se

Telefon: 020-59 59 59

 

そして来月11月はMustaschkampen。こちらに関してはまた後ほど~。

# Lisa Indra


キノ コ狩りシーズン になりました

スウェーデンはキノコ狩りシーズンに突入しました。

今年はキノコが豊作のようで、FacebookやInstagramでも沢山のキノコの写真がアップされています。
スウェーデンでも日本同様、毒キノコを食べて死亡、又は腎臓などに障害が出て透析が必要になったというケースも出ています。また、数年前ですがタイからの移民が、スウェーデンの毒キノコを母国で食べていた食用キノコと混同して食べてしまい、死亡するというケースもありました

こちらのページではスウェーデンで注意すべき毒キノコの情報が29か国語で載っています。(残念ながら日本語はありません)

https://giftinformation.se/servicemeny/in-english/mushroom-brochure/

キノコ狩りのルール
・食用キノコだと100%自信のあるキノコだけを採る
・味がよい毒キノコもあるので、味見をして毒があるかどうかを判断してはいけない
・最新のキノコの本を使用すること(20年前は食用キノコと言われていたキノコでも、新しい研究で毒が発見されたというケースも沢山あるので注意が必要。個人的にはPelle Holmberg著の「Nya Svampboken」をお勧めします。スウェーデンの一般的な食用キノコとそのキノコと間違いやすいキノコ、そして毒キノコが載っています)

もし、毒キノコを食べてしまった!と思ったら…
・112に電話をして、Giftinformationscenteralen(中毒センター)に繋いでもらう。
・緊急でない場合は、Giftinformationscentralen 010-456 6700へ連絡する。

https://giftinformation.se/globalassets/publikationer/svampbroschyr/engelska-english.pdf

# Lisa Indra


参議院議員団のスウェーデン視察に際し意見交換会

先日9月4日、参議院の超政党議員団がスウェーデン視察のため来瑞されました。川田龍平議員(民進党)を団長とする5名の議員の先生方(上野通子議員(自民党)、島村大議員(自民党)、中泉松司議員(自民党)、浜田昌良議員(公明党))がお越しになりましたが、JHPSからボランテイアの会員が意見交換会に参加しました。

 

フライトの遅延などもあり、時間に余裕のないランチミーテイングになりましたが、議員の先生方が日本の医療システムに危機感を持って、対応策を講じることに熱意を持ってくださっていることが伝わって参りました。スウェーデンの医療システムが必ずしも良い訳ではありませんが、スウェーデンの医療現場からの声をお伝えすることで、何か参考になることがあればいいなあと思いました。

川田議員の奥様は、ジャーナリストの堤未果さんとのことで、ご夫婦それぞれのご著書をお土産にいただきました。お読みになりたい方はご連絡ください。

 

# dragonmamma


ブータンの総合病院の癌ユニット訪問

ヒマラヤの小国ブータンというと、日本では幸福の国として知られていますが、私Birdwatcher は昨年に引き続き今年の夏季休暇もブータンで過ごしました。ブータン訪問は3回目です。休暇とは言っても、昨年行ったブータンの市民社会に関する調査を拡大した、ちょっとした調査をするのが主な目的でした。そのついでと言っては語弊がありますが、首都のティンプーにある総合病院を訪問して、総副婦長さんと癌ユニットの看護師さんおふたりに、ブータンの癌治療の現状について伺いました。私自身がカロリンスカ(ソルナ)の癌クリニックで、ブラキー治療にたずさわっているため、癌ユニットに興味があったのが理由です。これはその簡単なレポートです。訪問した病院の名前は、Jigmi Dorji Wangchuck National Referral Hospital (JDWNRH)といい、第3代国王の名前がつけられています。

まずはブータンの医療システムの簡単な説明ですが、ブータンには3つのReferral Hospital(日本語で特別な訳があるのでしょうか?)があり、 JDWNRH(短くJDと呼んでいるようです)の他には、東部のモンガール、中部のゲレフーにそれぞれあります。モンガールとゲレフーの病院で手に負えない患者さんはJDに送られて来るそうです。その他に21の郡病院、その下にはBasic Health Unit (BHU) 1と2がありますが、医師がいるのはBHU1までです。また専門医がいるのはJDだけだそうです。

患者の経済的負担という面から見ると、スウェーデンの医療制度は非常に寛大な制度ですが、ブータンは更にその上を行っています。患者の経済的負担がゼロであるばかりでなく、ブータン国内で治療できない患者さんを主にインドに治療に送る場合も、交通費、滞在費も含め全て国が負担します。患者さんばかりか、エスコートがつかなければならない場合には、その人にかかる費用も全て国負担だそうです。現状ではブータン国内で行なっている癌治療は主に抗癌剤治療だけで、手術と放射線治療は主にインドのコルカッタに患者さんを送ってするそうです。ただその負担が非常に大きいので、放射線治療は早ければ来年にもJDで始める予定で、機器はすでに準備されていて、これから看護師さんの教育を始める必要があると、総副婦長さんがおっしゃっていました。

さて癌のお話ですが、ブータンで一番多いのは胃癌だそうです。総副婦長さんはブータン人が辛いものを食べるのが原因のひとつだと言われているとおっしゃっていましたが、後で看護師さんからお話をうかがったところでは、ヒトパピローマウィルスが原因となっていることが多いのだそうです。全国をカバーしている癌登録によると、胃癌に続いて子宮頸癌、乳癌、卵巣癌が多いそうです。現在のところ子宮頸癌のスクリーニングは35歳以上の女性に行われているそうですが、マンモグラフィーは導入されていなくて、他の癌のスクリーニングもないということでした。スクリーニングが導入されたとしても、山がちで交通網も発達していない地方では、医療機関へのアクセスも極端に限られているので、国民を広く網羅するスクリーニングの導入は大きなチャレンジと言えるでしょう。

多くの患者さんのケースで、診断を受ける時にはすでに後期癌という状況だそうです。すでに転移している場合が多く、そういう患者さんへの抗癌剤治療はJDで行なっていますが、運よく早期発見で手術や放射線治療が有効な患者さんの場合は、上記のようにインドに送られます。患者さんをインドに送る手配をできる病院は、全国でこのJDのみだということです。

基本的に長期入院の患者さんというのはいなくて、例えば3−4日かかる抗癌剤治療を受ける患者さんは入院しますが、その他の患者さんは通院になるそうです。患者さんは通常病院に入院することを望まず、現実的に言ってしまえば自宅で死を迎えたがるので、退院や治療の終了に際しては、家族に痛み止めやその他の副作用に対応する薬の投与の仕方などを指示して、自宅に帰すのだそうです。また田舎の方に行くと、人々は自分が癌を患っているなどということを隣人に知られたくないと考えるケースが多いので、そういう社会的な事情も病院は考慮する必要があるというお話でした。こういうお国柄なので緩和ケアの施設は発達していなくて、前国王の一番末の妹さんのイニシアティヴでJDに緩和ケアのベッドが3床だけ設けられているということでした。訪問看護もないので、自宅での看護は家族が負担します。

次に看護師さんについてですが、他の多くの国と異なって、ブータンでは看護職は女性職という考え方は昔からなく、看護師さんの間に占める男女の割合も半々に近いのだそうです。私がお話を聞いた看護師さんは男女それぞれ1名ずつで、おふたりとも私の訪問時には抗癌剤治療にたずさわっていらっしゃいました。

JDでもカロリンスカと同様、抗癌剤の治療の決定は医師が行いますが、実際の治療は抗癌剤治療の教育を受けた看護師が行うそうです。お話を聞いてみると、ブータンの看護師さんたちもスウェーデンの看護師さんたちと同様、かなり重要な仕事を任せられ、大きな責任を負っているようです。抗癌剤に使う薬は、以前は病棟で看護師さんが調合していたそうですが、10年くらい前から薬局が担当するようになり、今では薬局の中でも抗癌剤の調合をするセクションは分かれているとのことでした。

ブータンでは全ての病院は国営なので、看護師さんたちは公務員です。女性の方の看護師さんはまだ若い方で、高校卒業後にタイで4年間看護学の勉強をしてブータンに戻り、公務員試験を受けたのだそうです。この試験に合格したら、どの病院に勤務するかは政府が決めます。彼女はJDに勤務して2年目だそうですが、腫瘍学に興味があるので、半年ほどのスペシャリストのコースを取ろうと考えているとのことでしたが、総副婦長さんからは修士に進むように励まされていました。

男性の看護師さんはもっと年上のようで、ブータンで2年間看護の勉強をしてディプロマを取り、その後タイで1年間腫瘍学の勉強をしたのだそうです。彼は看護大学では勉強していないわけですが、ブータンでよく見られる、継続学習でキャリアを積んできた人です。彼が看護師になった時代には、看護師の需要が多いのに供給が追いつかなかったので、公務員試験を受ける必要はなかったのだそうです。今では供給が需要を上回っているので、公務員試験はある意味でふるいの役割を果たしているとのことでした。

ひとつ面白いと思ったのは、ブータンでは看護師になると助産師としても働けるということで、例えば小児科で突然助産師の手が足りないとなると、別のユニットの看護師さんが臨時に送り込まれたりするのだそうです。日本でもスウェーデンでも、普通の看護師さんが助産師として働けるという話は聞いたことがないので、これには少し驚きました。

数年前に休暇でコスタ・リカに行った時も、公共の病院ではたとえ観光客でもお金を払う必要はなく、薬も無料でもらえるということを知って驚いたのですが(事実患者として診療所にかかったのです)、他の国の医療事情を知るのは面白いですね。

# Birdwatcher