皆さんはStandardiserade vårdförlopp(SVF、癌疾患の医療プロセス)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
しばらく前(確か7-8年ほど前)スウェーデン国内のどこに住むかで、がんの診断・治療を待つ時間にバラツキがあり、とても不公平だとメディアなどで大きく取り上げられました。2014年にスウェーデン政府はそのバラツキを出来るだけ軽減するという目的で、Standardiserade vårdförlopp(SVF)というプロジェクトを開始しました。
SVFとはがんが疑われた場合、どんな検査をどれだけの期間に行い、手術や放射線などの治療をいつまでに行われるようにするのか?というプロセスを示したものです。疾患によって、検査や目標とする期間には違いがあります。
SVFという言葉が書いてある紹介状の場合、一定の期間内に検査・治療を予約するようにしています。(残念ながら必ずとは言えませんが、その期間を過ぎると施設にペナルティーがかかるような仕組みになっているはず)
検査・治療の待ち時間が一番つらいと多くの患者さんがおっしゃいます。
それを出来るだけ迅速に、しかも的確な検査でプロセスを進めるというのがSVFの一番の目的だと思います。そして、そのプロセスが国内どこに住んでいても同じように進められるというのも重要なポイントです。スウェーデンではOrättvis(不公平)ということをかなり嫌う国ですから。
こちらのページでは疾患別のSVFのプロセスが確認できます。
https://www.cancercentrum.se/samverkan/vara-uppdrag/kunskapsstyrning/vardforlopp/
SVFは2015年より始まりましたが、残念ながらいまだに地域差があるという報告もあります。
https://www.cancerfonden.se/nyheter/vantetider-i-cancervarden-ar-ett-geografiskt-lotteri
非常に個人的なことですが、去年の夏に血の塊が出るような血尿があり、SVFのお世話になりました。VCに受診後10日間以内にCTと膀胱鏡の検査。VCの医師には「癌ではないとは思うけれど、最近はこういうプロセスをふむのよ。でも、癌は殆ど疑ってないんだけどね、万が一のことを考えて」と何度も念を押されました。「万が一のことを考えての検査だから」と軽く考えていた私ですが、自分のカルテに「SVF」の文字を見た時は、癌という疾患をとても身近になり少しだけ怖くなりました。(日頃、がん医療で働いているのにもかかわらず!)
ただ、私のような余り癌の可能性のない症例が、本当にがんの疑いの高い人の検査を押しのけているのでは?という気もちょっとしてしまったのでした…。でもきっと日本ならばその日のうちに検査とか入るのかもしれないですね。すっかりスウェーデンのペースに慣れてしまっている私でした。それがいいのか?悪いのか?
# Lisa Indra